2021年5月11日 ベルリンの街に立ってみようという個人企画の初日、今年一番の夏日のような暑い中をトラムでアレキサンダープラッツに向かった。乗り継ぎのために駅で電車を待っているとホームの壁一面に、片腕の注射されたあとをカメラに向けてにっこり笑う人々の大きな大きな宣伝が並ぶ。前も後ろもその宣伝一色だ。そこから地下鉄に乗り、最寄りの駅から立ってみる予定の通りに近づくと、その通りの端に大きな警察の車が止まっている。車の中にも外にも警察がいて、だいたい4〜5人くらい。なんとなく怖いと感じながらも、一人で踊るだけのことは禁じられてないよなあと心の中でつぶやく。
汗ばむ陽気の中、ペットボトルの水を飲んでちょっとストレッチ。すると、いかにもベルリナーという感じの男性にドイツ語で話しかけられる。「何を体操とかしちゃってんの〜?」と言う彼に、片言のドイツ語で自分がダンスを踊ろうとしているとか、旦那が通りの反対から撮影するとか喋ったら、「旦那とはもう長いの?」みたいな、たぶん、そんな質問をされて戸惑っていると「あの角に警察がいるよね〜、ああいうのってなんか良くないよね〜」と喋りながら去っていった。そして、静かに目を閉じて街に耳を済ませる。暑いながらも風が気持ち良い。車の音、鳥の鳴き声、アスファルトの熱、警察の視線、そんな雑然としたいろいろが体をざわざわ言わせる。そして、静かに体を反応させていく。少し動くと、すぐに新たな情報が体をざわつかせるので、なかなかエネルギーを集中させることができない。けれどもその雑然とした耳を済ます行為は、しばらく人前でパフォーマンスをしていなかった私にとってとても新鮮な時間でもある。誰かが私にちょっと気づいたり、見つめたり、奇異な目でみたり、完全に無視したりしつつ、自転車やジョギングや友人との語らいやデートや、人々が普通の日々のそれぞれの瞬間を生きていて、私はその瞬間に触れて、背中側の遠くに連邦議会議事堂があり、目の前の道路にパトカーも通り過ぎる。30分踊ろうと思っていたのに、23分くらいで終わってしまう。でも、この取り組みを続けながら、街の変化にも耳を済ませてみようと思う。その帰りにバスに乗ろうとしたら、一人きりで白い大きな旗を掲げて連邦議会議事堂の入り口にたち続けている女性を見かけた。これで見かけるのは3回目だけれど、間違えなく同じ人みたいだ。この感染症防止法への反対の意思表示はあまりにも「小さな声」だが、とてつもなく凛としてまっすぐにわたしの魂に向かってくる。
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