翌日、金曜日のデモで怒りのドラム隊を目撃した。デモ直前の国会議事堂前駅を降りるとすぐに太鼓の音が聞こえてきて、それは「なんみょうほうれんげいきょう」と唱えながら太鼓を叩く仏教の方達だった。これから何かが始まる。そんな感じだ。静かなイントロダクションのように人々がじわじわと集まってきた。警察も配備され、通行人用のコーンやバーが設置される。白い風船を持った人々の群れが多くなっていく。その中の誰かが風船に「原発ゼロ」と赤いマジックで書いたやつを一つだけバーに結びつけて去っていく。時々写真を撮る人たちが、その風船を見つけては写真を撮っていく。利発そうな美女がカメラを持っている取材の人にインタビューされている。「今回デモに参加しようと思った理由は何ですか?」
誰かが、ドラムを叩き始める。序曲のようにドラムが重なり合っていく。デモに参加する人々の顔、顔、顔。いろいろな立場の人が、内発性を刺激されて沸き立ってくる。旗が風になびく。おそろしくワクワクする。そうだ、人々はここではちゃんと反応している。切実さを共有している。そう感じた。井手さんの顔も紅潮してくる。ドラムの響きがはち切れそうになった時、デモの歩みが一歩ずつ前へと進んで行く。そして加速していく。ドラム隊の響きはシュプレヒコールとは全然違う。本当に内発的な動きを引き出す。それぞれの人が本当に内発的に何かをする行為として、それらが重なり合う行為として、それは希有な機会に違いない。限りなく芸能の発露に近い。
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